観劇日記 最強の一人芝居フェス「INDEPENDENT」
2021-03-23


「千田サトミ」さんとは同じ劇団に所属していたことがある。セリフが聞こえないほどの早口でも、滑舌の良さからリズミカルに聞こえる。セリフはもっとはっきりと聞きたいところだが、たぶん演出によるものだろう。
それにしても、よくもまああれだけのセリフを覚えたものだ、僕には不条理劇としたとらえられないこの脚本を。
狂気にすぎるシーンがあった。狂気を狂気のままに演じることができるのが、この役者であった・・・多分本人は狂気とも何とも思っていない気がするが。
脚本・演出の「渡辺たけし」さんのことを多分僕は知らないが、このふたりは旧知の仲なのではなかろうか。この脚本を演じるにはうってつけの役者であることは間違いない。彼女以外は脚本に疑問を抱き、表現に過不足が生じると考えられる。

(4)正直なところ・・・

脚本はあまり好きではない。過去にベケットのホンで演出したことがあるにも拘わらず、ではあるが。
演出はほんのちょっとだけテンポを変えると見やすいだろう。演出の意図するところとは違う可能性はあるが。
役者は見ごたえがあり、他に同じようなタイプは見当たらない。

好みの分かれる30分の一人芝居、だということだろう。

そして僕は、脚本はともかく、この役者を観たいとずうっと思っていたことに改めて気づいている。


3.「ミミクリ」 ※大阪招聘作品

 出演 近藤ヒデシ
 脚本・演出 成田竜治

(1)ストーリーを簡単に

今から2300年ほど前、食客3,000人を抱えていたといわれる孟嘗君が、他国の王にその命を狙われる危機に陥った。その危機を救ったのが、食客の二人。他国の王への献上品を欲しがる妃の口添えを得るために献上品を盗んだ盗人、天下の関・函谷関を鶏の鳴き声で朝を告げて開門させた物まね上手、これをして鶏鳴狗盗という、との故事がある。

世界史に物まねで記録された物まね名人にあこがれる、物まねによる故事の紹介タイム。

(2)面白いことは面白いが

物まねが演劇感を薄めていることに、残念な気持ちを覚えてしまった。これはこれで芝居なのだが、物まねの出来具合みたいなものをついつい追ってしまう自分がいた。

いや、世界史に唯一刻まれた物まね名人のことを(多分)リスペクトして、一人芝居として作り上げてるのだから物まねが多用されているのは脚本としてのテーマだろうし、ただただ僕の視野が狭いだけなのだが。

(3)すこしだけ丁寧に、少しだけ地に足をつけて

印象の部分かもしれないけど、物まねに力が入ってたり自信があるせいだろうか、芝居よりもパフォーマンスのほうに近寄った作品との印象を持っている。そのために、演じ分けた登場人物同士の関係性に少々の狂いがあるように感じた。

A 「おい」
B 「へぇ」

AとBの心理的関係はセリフとしぐさで演じ分けられよう。
同じように、

A 身長160cm
B 身長180cm

AとBの物理的関係もセリフとしぐさで演じ分けられよう。
今回の舞台では、言ってみればAとBの視線が狂うんですな。

某新聞社の自社広告も、同じ状況に陥っている。
仕事仲間?ビジネスパートナー?の男女の視線がすれ違っている広告をこの2年くらいだろうか、否応なく目に入ってくる。身長差のある男女をそれぞれ撮影して、サイズを修正して合成したのだろう。ふたりとも空(くう)を見ているようにも見える。

こういう違和感を感じたし、もっと高い完成度を求めてしかるべき役者、脚本だと思った。


〜 以上、雑感 〜


やはり劇場はいいですな。
機会をつくって、観劇雑感と洒落込みたいです。


追伸、
感染症対策、勉強になりました。

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